
タイ式キックボクシング「ムエタイ」の世界王者を目指す女子中学生が甲良町にいる。町立甲良中学1年の久田 愛心 さん(13)。ジムに通う兄に刺激を受けて約5年前に格闘技を始め、国内大会も制した。選手生活を後押しする輪も広がっており、久田さんは「応援してくれている人たちのためにも勝っていきたい」と意気込んでいる。(武井彩留)
7月末の午後9時過ぎ、久田さんが何度もキックやパンチを打ち込む音が、リングに響いていた。愛荘町愛知川のキックボクシングジム「TEAM SBS」。練習相手は、久田さんの父、政則さん(48)と2人の兄だ。政則さんはキックボクシングにのめり込む子ども3人の練習環境を整えようと、2024年に、物置に使っていた自宅の小屋を練習場に改装し、ジムとしてオープンさせた。それも手狭になり、25年夏に現在の場所に移転してきた。キックボクシングの経験はほぼないが、解体業を営む傍ら、動画などで独学してトレーナーを務める。
久田さんが競技を始めたのは、小学2年の秋、那須川天心選手にあこがれてキックボクシングを始めた1歳年上の兄、 翔葵 さん(14)の練習を見ているうちに、「自分もやってみたい」と思うようになったのがきっかけ。以来、学校帰りなど、ほぼ毎日、練習を重ねた。
5か月後の公式戦でデビューし、以降、国内のアマチュア大会で五つのタイトルを獲得。昨年(イタリア)、今年(タイ)と2年連続で世界大会「アメイジング・ムエタイ・ワールド・フェスティバル」に出場した。
「普段は口数が少なく、おとなしい性格」(政則さん)だが、リングに上がると顔つきが変わる。記者が取材した練習では、脚の長さを生かした鋭い前蹴りを武器に、相手の隙を逃さず攻撃を重ねていた。
ただ、トップレベルの選手が集まる世界の壁は厚い。6月にタイで行われた世界大会ではジュニア(12~13歳)部門の42キロ級に挑み、身長が7センチほど高いロシア人選手に判定負け。前年に続いて初戦で涙をのんだ。
クラウドファンディング(CF)で「世界一という夢を一緒に追いかけてもらえたら」と呼びかけ、39人から寄せられた約110万円を渡航費や宿泊費などにあてて臨んだ大会だった。地元建築会社など36社がスポンサーについており、トランクスには支援企業のロゴが並ぶ。リングをおりる時、涙があふれた。「応援してくれた人に申し訳ない」。悔しくて、帰国した日の夜から練習を再開した。
久田さんの目標は、「ムエタイの世界一になること」。世界に挑み、日本の同世代や子どもたちに「自分でもできる」という希望を見せたいという。
「世界の選手と戦い、自分に足りないところを知った。たくさんの方に支えていただいた感謝を忘れず、次は恩返しをしたい」と久田さん。長兄の 翔愛 さん(18)も「努力家」と評するファイターは、世界の頂点を目指し、今日も練習に励む。
出典:読売新聞オンライン
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