子育て支援策推進へ
民間有識者らで作る「人口戦略会議」が24日に公表した報告書で、県内では高島市と甲良町が若年女性人口の大幅減で将来的に「消滅可能性自治体」になると分類された。一方、栗東、守山両市は減少率が低い「自立持続可能性自治体」となった。受け止めは様々だが、各自治体は人口減対策や子育て支援策を一層、進める考えだ。
報告書は、出産の中心となる20~39歳の女性人口について、2020~50年の減少率を推計。50%以上減少する自治体を「最終的に消滅する可能性が高い」とし、減少率が20%未満の自治体は「自立持続可能性」などと分類した。
10年前には、増田寛也・元総務相が中心の有識者会議「日本創成会議」が同様の手法で、全国の896自治体が「消滅可能性がある」と推計し、県内では甲良、竜王、多賀町が該当した。今回は甲良町と新たに高島市が消滅可能性となり、多賀、竜王両町は脱却した。
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甲良町は10年前の推計後、町の魅力を高めようと地場産野菜の料理などを楽しめる農家レストランを3か所整備。空き家バンク制度も本格的にスタートさせ、農業を志す地域おこし協力隊員を募るなどしてきた。
ただ、町内には宅地が不足し、子育て世帯が親元からの独立を機に町外に転出する課題がある。町は、近江鉄道尼子駅周辺で宅地開発を計画し、町有地への企業誘致にも乗り出している。
熊谷裕二副町長は「分類は客観的事実として受け止め、10年、20年後を見据えた対策を地道にやっていく」と力を込めた。
高島市では、自治体合併直後の05年に約5万5000人だった人口が23年度末で4万5379人まで減少。高齢化率は36・9%に及び、人口減の要因は自然減だ。
市は保育料を完全無償化し、中学生までの医療費・学校給食費の無料化を実施。23年から医療費無償化を高校生に拡大するなど、子育て支援策を充実させてきた。JR西日本との連携事業や移住相談の専門職員の配置など移住促進にも注力し、年200~300人の転出超過が、22年には3人の転入超過となった。
市の担当者は「少子高齢化や若年層の減少に特効薬はない。分類に左右されず、持続可能なまちづくりを進める」と話す。
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自立持続可能性自治体となった守山市と栗東市には、いずれもJRの駅がある。通勤・通学の利便性が高く、京阪地区のベッドタウンとしてマンションや宅地開発が進み、若年層を中心に人口流入が続くのが特徴だ。
守山市では19年度以降、年500~700人台の人口増が続いたが、23年度は56人増と鈍化した。市は一時的なものか検証する。
森中高史市長は24日の記者会見で「分類について特にコメントはない」と冷静に受け止め、「市の活力維持には緩やかな人口増加が続くのがベストだ。今後も子育て支援や教育・住環境の向上に力を入れる」と述べた。
栗東市では19年に人口が7万人を突破、30年に7万2000人の目標を掲げる。
市地方創生企画課は「全国的な人口減の中、『持続可能』の分類はありがたい」としつつ、転出者対策を課題に挙げ、「ニーズに合った住宅供給や企業誘致を含めた土地利用など、今後も気を引き締めて、市の魅力アップに努める」とする。