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春の褒章 県内10人

 春の褒章が発表され、県内からは10人が選ばれた。業務に励み模範となる人をたたえる黄綬が4人、公益に力を尽くした人が対象の藍綬が6人だった。発令は29日付。

山と向き合い 森づくり

<黄綬> 林業 栗本慶一さん 75(高島市)

「多様性のある森づくりを目指したい」と話す栗本さん(高島市で)
「多様性のある森づくりを目指したい」と話す栗本さん(高島市で)

 江戸時代から林業を営む家の5代目。高校卒業後に家業を継ぎ、半世紀以上にわたって山と向き合いながら育林技術を培ってきた。受章には「まだまだ道半ば」と謙虚に語る。

 家業を継いだ当初は高度経済成長期で、木材が大量に必要とされた時代。多くの職人を雇ってひたすら木を切り出す日々だったが、一方で、大量伐採による山への影響も気になっていた。

 40歳の頃、作業中の事故で入院、リハビリなどで1年ほど林業の現場を離れた。その間、山をどう守ろうか悩み、ヒントを求めて各地の林業家などを訪ね歩いた。やがて、それぞれの土地の気候や文化に根差した技術があることに気付いた。「けがは重かったが、自らの足元を見つめ直すきっかけになった」と振り返る。「山が持つ生産力を見極め、山の力を信じて木を育てよう」。その思いは、今も変わらない。

 育てるだけでなく、木を生かす取り組みにも尽力する。2004年には、育てた木で地域貢献に役立てたいと、地元の工務店や建築士などに声をかけ「安曇川流域・森と家づくりの会」を設立。曲がっている木も無駄にせず、どう使うか知恵を出し合って生かす方法を模索する。

 自然環境の保全と産業振興による地域活性化の両立を目指し、今も精力的に活動を進めている。「朽木地区の森は琵琶湖の環境とも密接に結びついている大切な場所」と言い、「多くの人に、木や森との関わりを見つめ直してもらうきっかけになるよう、これからも林業の発展に尽くしたい」と意気込んでいる。

イチゴなど活用 商品開発

<黄綬> 農業 ■嶋久平さん 66(愛荘町)

「農業は、おいしく食べるという大切なことに携われる仕事」と話す■嶋さん(愛荘町で)
「農業は、おいしく食べるという大切なことに携われる仕事」と話す■嶋さん(愛荘町で)

 自らが生産した農産物を活用して商品を開発し販売するなどの先進的な取り組みが評価された。「みんなと同じことをやってきただけ。特別なことは何もしていない」と謙遜する。

 代々続く農家に生まれ、子どもの頃から土に親しんできた。高校卒業後、兼業農家に。高齢化や後継者不足に悩む近隣の農家から稲作を頼まれるようになり、耕作面積が約15ヘクタールにまで増えた40歳頃に専業農家になった。

 県の指導でイチゴのハウス栽培を始めたのもその頃。苗植えや収穫など1年を通して作業があるといい、「ハウス内の湿度や温度の管理だけでなく、必要のない茎や芽を取り除くなどすべての作業が大切」と話す。

 2009年には、仲間とともに農業グループ「あいしょうアグリ」を設立。丹精込めて育てたイチゴや米などを使ったジャムやクッキーの商品化に本格的に乗り出し、19年には法人化して代表となった。

 後進の指導にも熱心に取り組み、11年から今年3月まで県指導農業士として、研修などを通じて若手の就農希望者らを育成。これまでに2人がイチゴ農家として独立したという。

 今の課題は、稲作の後継者を育てること。コツのいる農業機械の操作のほか、草刈りなど根気が必要な作業も少なくないが、「希望者には、仕事のやりがいなどを話して、細かく丁寧に指導していきたい」と笑顔を見せる。

※■は「广」に「黄」

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[紹介元] YOMIURI ONLINE 春の褒章 県内10人

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