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引退後の馬親しんで

引退後の馬親しんで
並木沿いを馬に乗って進む来場者たち(滋賀県高島市で)

2頭の馬が人を乗せ、ゆったりと歩みを進めていた。かたわらには、まっすぐ天に向かって幹を伸ばすメタセコイアが道路両脇に整然と並ぶ。観光スポットとして知られるようになった並木道は2・4キロに及ぶ。

先を行く栗毛の「マロン」に乗るのは富山市から家族3人で来た小室結ちゃん(3)。元競走馬のネコビッチに乗り、後ろから見守る母親のまりかさん(33)がいても、一人で乗る結ちゃんの表情はこわばったままだ。そこで馬を引くスタッフが「マロンちゃんは山の中でお客さんを乗せる仕事をしていたんだよ」などと馬たちの現役時代を紹介。次第に結ちゃんの顔が緩んだ。

結ちゃんらと馬たちが出発したのが、メタセコイア並木にほど近い「メタセコイアと馬の森」だ。引退した競走馬などと乗馬や馬車を楽しむ観光養老牧場で、2025年4月にオープンした。

施設は引退競走馬など行き場のない馬を受け入れ、会員サービスを活用し、馬のセカンドキャリアを生み出す支援を行う「TCC Japan」(栗東市)が運営する。

ポニーを含め、10歳から29歳までの13頭の馬が厩舎に暮らす。馬たちの「前職」はそれぞれで、引退競走馬や、けがをして乗馬クラブを引退した馬、乗馬クラブが廃業し行き場を失った馬などがいる。

同社のカスタマーサポート、小松恵さんは「セカンドキャリアを持てる馬は多くない」と話す。行き場を失った馬は解体処理されてしまうことが多い。「人を乗せることができない子も、お客さんにかわいがってもらうという仕事がある。ここでなら輝ける」と力を込める。

根底には「誰でも気軽に馬に会いに来てくれるところを作りたい」との思いがある。会員以外も予約なしで馬との触れあいを楽しめる施設になっている。

普段の「馬さんぽ(並木乗馬)」は「栗畑コース」と「並木コース」の2種類がある。暑さ対策で夏季のコースは短くなる。「引退競走馬に乗りたい」と指名する競馬ファンも多い。来場者は施設内で販売されているおやつのニンジンをあげたり、砂浴びをしている馬を観察したり、ふれあったりすることができる。現在は1人4000円で、500円を追加して馬を指名することができる。

「じゃれ合ったり、土の上で転がったり、馬たちがのびのびと過ごす姿も見られます」と小松さん。マキノの自然に癒やされながら、そっと鼻筋に触れた馬たちのこれからの穏やかな日々に思いを巡らせた。(小手川湖子)

施設内にあるカフェスペースの人気メニューは「うまっしゅホットドッグ」(税込み1400円)だ。 馬糞 を生かした 堆肥 で育てたマッシュルームと小麦を使ったパンに、大きなソーセージをはさみ、馬の形にカットされたニンジンが添えられている。

地元産のフルーツカップ(同1000円から)や、農家から仕入れた特産のアドベリーを使ったソーダ(同600円から)も爽やかな味わいだ。馬たちや並木の景色を眺めることができる。テラス席からはミニチュアホース3頭が交代で遊びに来る様子も楽しめる。

出典:読売新聞オンライン