大津市の京阪びわ湖浜大津駅前で毎月第3日曜に開かれる「浜大津こだわり朝市」の看板店の一つ、近江八幡市・沖島の「沖島漁師の会」が、21日を最後に朝市での出店を終えることになった。漁師夫婦3組6人が作る新鮮な湖魚料理で知られたが、高齢化で決断した。メンバーは「長年来てくださった方たちには感謝しかない」と名残を惜しむ。(生田ちひろ、武井彩留)
浜大津の人気店 高齢化「苦渋の決断」

本業合間で準備湖魚料理実演販売
赤い大漁旗と、「沖島漁師の会」と書かれた横断幕を掲げたテーブル。メンバーは売り場に、とれたてのアユやウロリ(ゴリ)、フナのつくだ煮や煮付け、えび豆などを詰めたパックを所狭しと並べ、ワカサギの天ぷらとスジエビのかき揚げを実演販売してきた。
行列をつくる人たちにメンバーが「どうですか」とふなずしの試食を勧めると、水深60~70メートルで捕るためか、「臭みが全然ない」「おいしい」との声が上がるという。京都、大阪、奈良から来るファンもおり、テレビでも「漁師の味」と紹介された人気店だ。

メンバーの北村すえみさん(69)は「『もう他のは食べられへん』『病気しても、ここのふなずしで元気になった』なんて言われてね」と目を細める。
出店を始めたのは2009年。会のメンバーが島を訪れた大阪の知人に手料理を振る舞った際、「これはおいしい。街で売れる」と勧められたのがきっかけだった。朝市の運営者を紹介され、「小遣い稼ぎにやってみよか」と6夫婦12人で会を結成した。
メンバーの本業は忙しく、初夏~秋は夜中に漁に出て、朝方に帰宅する。朝市へは、合間を縫って準備する。当日は午前5時、仮眠もそこそこに漁船に荷物を積み込み、対岸の堀切港(近江八幡市)へ。港からは軽トラックと乗用車の2台で浜大津へ向かう。商品のほか、数十キロに上る天ぷら油や小麦粉、調理台やガスタンク、夏は冷蔵庫まで積み込む。雨や雪の日はカッパ姿で、荷物にブルーシートをかけて運んだ。
冨田ふみえさん(75)は「大変やけど、『待ってたよー』というお客さんの声にそれまでの疲れが吹っ飛んだ」と声を弾ませる。
ただ、年を重ね、メンバーは半減。現在の6人も69~82歳だ。「名残おしいけど、体力が持たない」「車の運転も危ないし、事故のない間にやめるべき」などと話し合い、今夏、大津市保健所の営業許可の更新期限を迎えるのを機に、出店を終えることにした。西居英治さん(82)は「苦渋の決断だった」と語る。
朝市の運営に関わる「まちづくり大津」の清水健司事務局長は「近くの店の地酒と一緒に、天ぷらやかき揚げを楽しみにしていたリピーターは多かったので、残念だ」と惜しむ。
同会は、地元・近江八幡市のJAグリーン近江「きてか~な」(水曜定休)への出品は今後も続ける。
冨田さんは「10年以上も寄せてもらった」と感謝。北村さんは「これまでのご縁が本当にありがたい」としたうえで、「漁師は続けるので、湖魚料理は食べ続けてほしい」と願っている。