19日に甲子園球場で開幕する第98回選抜高校野球大会に、県からは滋賀学園(東近江市)と近江(彦根市)の2校が出場する。前回大会初戦負けの滋賀学園は雪辱に燃え、2年ぶり出場の近江は、全選手が甲子園初出場。それぞれの挑戦を追う。(学年は新学年)
昨春糧に 磨いた一体感
アルプス席を埋めた応援団から体に響くほどの音量で声援が鳴り響く。テレビで見ていた光景が目の前に広がっていた。昨春の選抜で初めて甲子園に立った吉森爽心副主将(3年)は、「ゲームの世界に入ったようだった」と振り返る。

1回戦で初出場の浦和実(埼玉)を相手に0―3で敗退。相手の変則左腕の前に4打数無安打に封じられた藤川倖生主将(3年)も「現実感がないまま、あっという間に終わってしまった」と、わずか1時間41分での終幕に唇をかむ。
試合で感じたのは「準備不足」だった。練習で徹底していた「意思統一」ができず、打線がつながらずに6安打無得点に終わった。打撃に自信が持てなかったという藤川主将は「納得がいかないまま打席に立ってしまった」と明かす。
昨夏からの新チームで選抜経験者はこの2人だけ。肌で感じた「違い」をチームメートに伝え、今春こそチーム一丸となって試合に臨むための準備を進めている。
遊撃手の藤川主将は「(甲子園では)声が全く通らなかった」という。左翼前に上がった飛球に、左翼手との連係がとれず、打球は2人の間に落ちて2点二塁打となってしまった。守り勝つためには声かけの頻度や声量を増やすのはもちろん、カウントごとの守備位置も意識。野手間で「ここまでは自分が捕る」などの話し合いを欠かさないようにしている。

2人はチームの意思統一に苦労してきた。新チーム発足時、山口達也監督(54)は「初球は全部振る」「二塁ゴロを打つ」などのテーマを試合ごとに各選手やチームに課したが、選手たちは「自分が活躍する」と空回りして、徹しきれなかったという。
昨年8月の練習試合ではまさかの6連敗。危機感を覚え、ミーティングの回数を増やし、練習や試合の中で出た疑問や課題は放置せず、下級生からも意見を募った。吉森副主将は「だんだん、意見を言い合えるようになっていった」と変化を感じた。
「チームが変わった」と2人が口をそろえるのは秋の県大会準決勝の近江戦。4点を追う九回二死一、二塁から4連打で追いついた。延長タイブレイクで敗れはしたが、藤川主将は「この粘りの野球が毎試合出来れば強くなる」と確信。目先の結果ではなく、チームで決めた方針を徹底して守ることの重要性を実感したという。
実は、主将は一度吉森副主将に代わったことがあった。8月末の6連敗の中で藤川主将は調子を落とし、監督が決断したという。責任を感じすぎて思うような打撃ができずにいた藤川主将に、吉森副主将は「好調時のフォームを思い出せ」と声をかけた。スイングを映像でチェックし直した藤川主将は見事に復調。秋の県大会の準決勝前に再び主将に戻った。
支え合う2人を中心にチームは一体感を増した。監督も「ここまで想定通りに来られた」と太鼓判を押し、藤川主将も「全員が同じ方向を向けている」と手応えを感じている。「ゲーム」のように実感のなかった甲子園を「現実のもの」にする。一体感をもって戦う先に、求めていた勝利があると知っている。
