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電子投票で生徒会選 守山市内の3高校で

 守山市内にある三つの高校で、生徒会選挙が電子投票で行われた。守山市と京セラ(京都市)による実証実験の一環で、若者の主権者教育という目的に加え、行政視察もあるなど、背景には自治体選挙での導入に向けた関心もあった。見えてきたメリット、デメリットは――。(河村真司)

 電子投票は、2002年に地方自治体選挙で実施できるようになった。翌年、岐阜県可児市議選で専用機器が故障して投票できなくなり、その後、最高裁で選挙無効の判決が確定した。普及は進まなかったが、市販端末が使用可能となったことで再開の機運が生まれ、昨年12月に大阪府四條畷市長選、市議補選で8年ぶりに行われた。電子投票分の開票作業は約1時間で終わったという。

 守山市では県立守山高と県立守山北高、立命館守山高で、9~12月にあった生徒会選挙でタブレット端末を使って投票。端末内のUSBメモリーを専用のパソコンに差し込む形で集計が行われた。

 四條畷市では二重投票を防止するため、投票1回ごとに画面をロック、係員が暗証番号を打ち込んで解除していたが、今回の実証実験を通してQRコードで解除できるように改善。操作は端末画面に表示される立候補者名をタッチペンで押すだけで、京セラによると「1万票を2~3分で集計可能」という。

 従来の投票方法では「田中一郎」「田中花子」という同姓の候補者がいた場合、投票用紙に「田中」としか書かれていないと、2人で票を分け合う案分票が生じ、開票確定までに時間を要した。電子投票では案分票がなくなり、誤字による無効票もなくなる。一方で、視覚障害者が誰に投票したか確認する方法は音声しかなく、秘匿性が失われるといった課題もある。

 15日に立命館守山高での投票を視察した他市の選挙管理委員会職員は「開票所でのヒューマンエラーは確実になくなる。安全ならやりたい」と興味を持った様子。ただ「選挙無効は困る」と、安全性について京セラの担当者に質問していた。

 生徒会長選、副会長選など四つの投票を端末で行った同高2年の生徒(17)は「タッチするだけなのでやりやすい。集計も簡単」と使いやすさを実感。さらに「簡単に投票できるなら、投票率もアップするのでは」と期待した。

 ただ、現状では地方自治体の選挙だけで、衆院選や参院選といった国政選挙は認められていない。視察した守山市の森中高史市長は「国政と市のダブル選挙になったら紙と電子の投票が入り交じってしまい、有権者が迷ってしまう」と懸念を口にした。開票の時間短縮、携わる要員は減っても、市内39か所の全投票所に操作を説明する人員が必要で、端末のコストも課題の一つとなっている。

 今回初めて投票しない権利も認めた立命館守山高の投票率は72・9%。来春に卒業する3年生は64・6%にとどまった。また、守山高の生徒はアンケートで「選挙期間中、立候補者は一生懸命に演説している。僕たちは直筆で名前を書くべきなんじゃないかと思った」と答えた。利便性向上と投票率アップの相関関係は複雑なようだ。

 森中市長は19日の定例記者会見で、主権者教育としての効果に期待しつつも、「まだまだハードルは高い。実証実験を重ねる中で出た疑問点を明確にし、国に伝えていきたい」と語った。

 

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