全国高校サッカー選手権大会で県立野洲高が県勢初の優勝を果たしたのを機に、県が同高グラウンドに導入した人工芝の劣化が進んでいる。20年近く一度も張り替えられておらず、「芝の状態が原因でサッカーを続けられなくなる大けがを負った選手もいる」とサッカー部の横江諒監督(34)。同高は全面張り替えの必要性を訴えている。(香山優真)

同高サッカー部は、2005年度の大会を制し、華麗なパス回しなどで観客を魅了するプレースタイルから「セクシーフットボール」と称された。優勝を受けて、翌06年度に県の予算で人工芝を設置。「通常、7~8年で張り替える」(横江監督)といい、摩耗がひどくなり始めた約10年前からは県に張り替えを要望している。ただ、同高は現状で1億円かかると見積もっており、県は「高額すぎる」と難色を示している。
実際に芝の上を歩くと、大きな凹凸があるのがわかる。特に損傷が激しいゴール前は、応急処置でつぎはぎ状になっていて、特につまずきやすくなっている。横江監督は「ボールが不規則に跳ねて練習にならない。それどころか、足元の悪さが原因のけがが日常茶飯事だ」と嘆く。ドリブルをする時もボールを見ておく必要があるため、視野が狭くなり、プレーにも悪影響が出ているという。
今年4月に着任した
充朗校長(56)は「いち公立高のために多額の予算が出ないのはわかる」としつつも、「着任初日に傷んだグラウンドを見て、すぐに張り替えが必要なレベルだと感じた」と話す。
グラウンドの状態を理由に、同高サッカー部でプレーするのを諦める中学生も少なくないという。06年度に入学し、真新しかった頃を知る横江監督は「昔は人工芝が人気を集めたのに……」と肩を落とす。上品校長も「野洲でサッカーをしたくて入学してくれる子が減っていて、近年続く定員割れにもつながっている」とする。

体育の授業でも使っており、上品校長は「県の動きを待っている場合ではない」と考え、学校側だけで張り替え資金を集める方法を模索。PTA・後援会や同窓会と協力し、10月に同高の環境改善に取り組む一般社団法人「シン野洲高校応援会」を設立した。
事業の第1弾として、人工芝張り替えのためのクラウドファンディング(CF)を企画。目標額は1億円で、18日からCFサイト「キャンプファイヤー」の特設ページ「野洲の未来を芝でつなぐ~野洲高校サッカー部人工芝の全面張替プロジェクト~」で受け付けを始めた。期間は来年3月までで、返礼品には同部のエンブレム入りボールや、旧ユニホームなどを用意している。
上品校長は「今のグラウンドは非常に危険な状態。地元の人をはじめ、全国のサッカーファンにも協力してほしい」と呼びかけている。

