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厳しい訓練 心身鍛える

県警機動隊 記者が体験入隊

 山岳遭難や水難事故での捜索救助活動からテロ対策や爆弾処理まで、幅広い分野で活躍する県警機動隊。現場の最前線に駆けつける姿は目にするが、隊員たちの日頃の厳しい訓練はあまり知られていない。その実態に少しでも迫ろうと、2年ぶりに開催された報道陣向けの「体験入隊」に参加した。(東川直央)

鉄板入り防具と盾で駆け足 ■ 山岳遭難救助、搬送

山岳救助訓練で、声かけをしながら遭難者役の隊員をストレッチャーで運ぶ東川記者(左、大津市で)
山岳救助訓練で、声かけをしながら遭難者役の隊員をストレッチャーで運ぶ東川記者(左、大津市で)
防具と盾の総重量は約14キロにもなる(大津市で)
防具と盾の総重量は約14キロにもなる(大津市で)

 「体力的にちょっと厳しいこともあるかもしれないけど、頑張ってください」。会場となった機動隊庁舎(大津市御陵町)で西島亨隊長から訓示を受けた後、鉄板が入った防具を装着し、約7キロのジュラルミン製の盾を左手に持つと、体力を養うための駆け足訓練が始まった。

 分隊長に「現場到着にはどれくらい時間がかかるか分からない。だから、あえて走る時間は言いません」と告げられた。記者1年目の23歳。中学・高校時代は陸上部で、体力にも走ることにも自信はあった。それに、「そうは言っても、そんなに走らされることはないだろう」と高をくくっていたところもあった。

 1周200メートルのグラウンドを3周ほどして、「これなら何とかなりそう」と思った直後、隊列が敷地を飛び出し、隣接する裏山に向かった。ぬかるんだ足元に階段、そして上り坂……。「聞いてないよ」。心の中でつぶやいた。盾の重みも相まって、隊員に引き離されながらも、再びグラウンドへ。「もう終わりだろう」と最後の力を振り絞り、隊列に追いついたのも、つかの間。分隊長の「もう1周」の掛け声で心が折れ、陸上部のプライドも打ち砕かれ、歩いてしまった。

 「現場で気持ちが折れると命に関わる。訓練では、技術も大事だが気力も鍛えている」と、入隊5年目の村田悠巡査長(29)。この日は15分ほどだったが、普段は1時間以上走ることもあるといい、呼吸が全く乱れていない隊員たちと自分との差に、言葉もなかった。

 山で遭難した人を救助・搬送する訓練にも挑戦した。県内で昨年発生した山岳遭難は87件。うち、機動隊は地元の消防や警察署だけでの救出が困難と判断された5件に出動した。

 訓練は、駆け足訓練で走った裏山で行われた。「聞こえますか。今向かっているから大丈夫ですよ」。遭難者は姿が見えなくても、声が聞こえるだけで安心するといい、隊員たちに倣って声を出しながら山道を捜索した。

 約5分後、遭難者役の隊員を発見。ストレッチャーに乗せ、同じく体験入隊していた他社の記者4人とともに持ち上げて、下山しようとするも、これまでの疲れもあって手に力が入らない。すると、横にいた隊員から「苦しそうな表情を見せるな!」と厳しい声が何度も飛んだ。「無理や」と思っていたが、「私たちがきつさや不安を顔に出すと、遭難者は心配になってしまう」と真意を明かされ、限界でもやらなければならないことがあるんだと学んだ。

 訓練体験は4時間近くに及んだ。こんなに大変な訓練を日々こなしているとは知らなかった。その上、「普段の10分の1にも満たない」と聞かされ、驚きを通り越して尊敬しかなかった。「応援を呼ぶ側は誰が来るか選べないので、『この人が来てくれてよかったな』と思ってもらえるよう、常に上を目指して訓練している」という村田巡査長の言葉も胸に刺さった。

 機動隊には男性36人が所属しており、多くが20歳代だという。安全を守るために、時には命がけで訓練をしている同世代の隊員たちに負けないよう、仕事に精進していきたいと思った。たとえ10分の1未満の訓練だったとしても、自分の甘さを痛感するとともに、気力の大切さに気づくことができ、貴重な経験となった。

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[紹介元] YOMIURI ONLINE 厳しい訓練 心身鍛える

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