今年度、目撃倍増
生ごみなど放置せず撤去を
冬眠前のツキノワグマが餌を求めて行動範囲が広くなる秋を迎え、クマとの遭遇に注意が必要となっている。今年度は餌となるミズナラ、ブナの実が県内の山中で不作や凶作で、目撃件数も158件(10月末現在)と昨年同期72件の2倍以上となり、県は「過去10年で最も多いペース。クマを近寄らせない環境づくりを」と呼びかけている。(林華代)
県によると、県内のツキノワグマの推定個体数は、湖北(長浜、米原両市)で約160頭、湖西(高島、大津両市と長浜市の一部)で約150頭。県では希少種の位置づけとなっており、人の命や財産に危害を加える可能性がある場合以外は、殺処分を行わないことになっている。
今年度の県調査では、生息地である湖北、湖西を含む県内全域でブナの実が凶作だったほか、ミズナラの実は不作。コナラの実は湖北で豊作、湖西で不作だった。湖北は低い標高の地域でコナラの実なりが良く、クマが出没する可能性があり、湖西は全体的に餌となる資源量が少ないため、集落近くに現れることが懸念される。
4~10月のクマの目撃件数は高島市で84件で最も多く、うち、誤ってイノシシなどのワナにかかったケースが7件、殺処分は2件あった。次いで大津市43件(ワナ16件、殺処分1件)。長浜市は22件(ワナ2件)、米原市2件(同1件)、甲賀市3件、栗東市4件となっている。
県は、里山や町中にクマを呼び寄せないために、餌となる生ごみや収穫した農作物、カキ、クリなどの果実を野外に放置しないほか、ハイキングやキャンプで出たごみは持ち帰ることなどを挙げている。
また、クマは夜間から早朝にかけて行動することが多いため、山林など出没しそうな場所はその時間帯に出歩くことを避けるほか、クマは臆病な性格なので、ラジオや笛、鈴などで音を出すことも有効な対策としている。
万が一、クマと遭遇した場合には▽走って逃げず、背中を見せない▽大声を出したり、ものを投げたりせず、クマが逃げられる機会を作る▽子グマに出会った場合は親グマが近くにいる可能性があるため、近寄らず、追い払ったりしない――よう呼びかけている。また、人家近くで目撃した際は、目撃場所や時間、大きさ、移動した方向などの情報を近くの自治体に通報するか、110番するよう求めている。