高島の愛好家ら 団体結成
記念碑の設置目指す
大津市の浜大津と高島市の近江今津を結び、1969年に廃線になった
鉄道の記憶を継承しようと、高島市の鉄道愛好家らが「江若鉄道を語り継ぐ会」を結成した。廃線から半世紀以上が過ぎて鉄路の痕跡はほとんど残っておらず、今後、かつての近江今津駅や浜大津駅周辺に記念碑の設置を目指すという。(矢野彰)
湖西線建設で55年前廃線 ■ 遺構ほぼなく
江若鉄道は近江と若狭地方を結ぶことを目指し、滋賀、福井両県の住民らが株主になったことから「住民鉄道」とも呼ばれた。
1921年に大津市の三井寺―叡山で開業し、31年には浜大津―近江今津の全線約51キロが開通した。福井への延伸は実現しなかったが、通勤・通学の足として利用されたほか、琵琶湖で湖水浴を楽しむ家族連れらにも親しまれた。JR湖西線の建設が決まり、69年11月で廃線となった。
会の発起人は、高島市の鉄道愛好家、澤田市治さん(68)。父親が江若鉄道の社員で、澤田さんも幼い頃、近江今津駅で蒸気機関車に乗った思い出がある。廃線の年は中学生で、当日の朝の様子をカメラに収めたという。
ただ半世紀以上が過ぎ、往時をしのぶ遺構は多くが失われている。澤田さんは唯一現存していた旧近江今津駅舎の保存運動にも関わったが、老朽化で2021年に解体。江若鉄道を直接知る人も少なくなる中、会の設立を思い立った。
湖西線の開業から50年となった今年7月、高島市内で江若鉄道と湖西線の歩みを振り返る写真展と、会の設立総会を開いた。代表に澤田さんが就き、江若鉄道の写真を多数撮影していた鉄道愛好家の福田静二さん(75)(京都市上京区)も顧問として参加した。
写真展の来場者からは江若鉄道にまつわる思い出やエピソードが多数寄せられ、昔の株券など貴重な資料も寄贈されたという。会では、こうした体験談を冊子にまとめるなどし、江若鉄道を知ってもらう。記念碑の設置費用はクラウドファンディングも活用し、全国の鉄道ファンに協力を求める。
澤田さんは「湖西と福井の住民の力でつくられ、半世紀近く親しまれた鉄道。乗った人や働いた人の思いをできる限り記録し、後世に伝えたい」と話している。
会員は随時募集中(年会費1000円)。問い合わせは澤田さん(0740・22・4565)。