外国人 多言語への翻訳ツール
聴覚障害 必要支援伝達バンダナ
「『ご記入をお願いします』を分かりやすく伝えるには?」――。災害時の避難所で、日本語が十分理解できない外国人や、聴覚障害者らの受け入れを想定した避難所運営訓練が大津市内で行われた。多様性の視点を持って避難所運営ができる人材を増やそうと、市地域女性団体連合会が企画。同会の会員ら約90人が外国人のための「やさしい日本語」や多言語表示など、属性に応じた配慮について学んだ。(林華代)
市によると、ベトナムなどからの技能実習生の増加もあり、外国人市民はこの10年で約1・4倍に急増。市の人口の約1・6%にあたる5378人(6月1日現在)に及び、災害時の支援体制づくりが急務だ。
同会の会員は地域でボランティアなどに従事し、避難所の担い手としても期待されるため、対応力を磨いてもらう訓練を実施することにした。
外国人には、伝わりやすい「やさしい日本語」が求められる。訓練の講師を務めた県国際協会の職員は「立入禁止」「避難場所」といった災害時特有の言葉を多言語に翻訳できる「災害時多言語表示シート」(自治体国際化協会作成)や、多言語音声翻訳アプリ「ボイストラ」(情報通信研究機構開発)を紹介。
宗教や食文化への配慮にも触れ「イスラム教徒は炊き出しの豚汁は食べられない。カレー味の野菜スープなども考えてみて」と実用的なアドバイスをした。
大津市の職員は、聴覚障害のある人や支援者を見つけやすいよう開発した防災バンダナを紹介。目立つ黄色い布地の隅に「手話できます」「耳が聞こえません」などと印刷され、肩にかければ大勢がいる避難所でも一目で聴覚障害のある人か、手話通訳者だとわかる。
参加者同士で耳が聞こえにくい人らへのコミュニケーション手段なども議論し、能登半島地震の被災地で避難所支援にあたった市職員は「自治体の応援職員が女性の場合、専用の部屋を用意するなど対応を考えてほしい」などと提案した。
訓練に参加したパート従業員吉本志津子さん(53)は「多様な人たちを受け入れるため学ぶ機会は重要。女性だけでなく、子どもや障害がある人も一緒に訓練する場があれば」と話した。