大津男性殺人1週間 室内物色 形跡なし
大津市のレストラン経営新庄博志さん(60)が自宅で殺害された事件は2日で発覚から1週間。新庄さんはレストラン経営のほか、保護司として18年、罪を犯した人らの更生や非行少年の立ち直りを支援してきた。保護司仲間からは「活動の柱だったのに」と惜しむ声が聞かれた。
(藤岡一樹、西村歩)
■「絆を大切に」
新庄さんが保護司となったのは2006年。月に数回、保護観察中の人らと自宅で面談を重ねていた。周囲には「保護司としかつながりがない人もいる。太い絆ではないかもしれないが、大切にしないといけない」と語っていたという。
18年に県内の保護司らでつくる「県更生保護事業協会」の事務局長に就任。23年4月からは「保護司だけでは解決が難しい課題がある」との思いから、医療機関や学校、就労支援施設などとの連携担当者を各地に配置して社会全体で立ち直りを支援する「滋賀KANAMEプロジェクト」に中心的に取り組んでいた。
保護司で、同協会職員の男性(65)は「非常に熱心に活動し、『誰も社会の中で取り残されないようにしたい』と語っていた」と振り返る。
新庄さんと活動をともにしてきた保護司の女性は「今でも亡くなったという実感がない。新庄さんが取り組んできたことを何とか継続していきたい」と語った。
■帰宅後に襲われたか
これまでの捜査で事件当時の状況が徐々にわかってきた。
レストラン関係者によると、新庄さんは5月24日午後4時頃、経営する市内のレストランを訪問。会議に出席後、「近くの別の店に寄って帰る」と従業員に伝えて車で出発した。約1キロ離れた別の店近くの駐車場には、新庄さんのものとみられる車が午後5時20分頃に入り、午後6時頃に出た記録が残っていた。午後8時頃、関係者が新庄さんの携帯に電話をかけたが、応答はなく、折り返しもなかったという。
新庄さんは同市仰木の里東の自宅で一人暮らし。26日夕、1階のリビングでうつぶせの状態で倒れているのが見つかった。上半身に刃物による10か所以上の傷のほか、身を守る際にできる防御創が確認され、死因は出血性ショックだった。ワイシャツにスラックス姿で、素足にスリッパを履いていたという。
室内を物色された形跡はなく、凶器は残されていなかったという。県警は、帰宅後の24日夜に何者かに襲われたとみて、約110人態勢で捜査している。