「幻の城」規模解明へ前進
明智光秀が琵琶湖岸に築いた坂本城跡(大津市)の発掘調査で、市は、先に見つかった石垣の対岸となる、石垣の一部が新たに確認されたと発表した。その結果、外堀が幅9メートル前後の規模と判明。絵図や図面がない「幻の城」の規模を解き明かす第一歩となる発見だという。(矢野彰)
外堀幅判明 約9メートル
2023年10月以降、市が同市下阪本の宅地造成予定地の約900平方メートルを調査。高さ約1メートルの石垣が長さ30メートルにわたって見つかり、石垣に沿うように外堀の遺構も確認された。土地を所有する「三王不動産流通」(大津市)は市の求めを受けて開発を中止し、3月に国の史跡指定に向け協力するとの覚書を市と交わした。
今回は、先に見つかった石垣から西9メートルの地点を6平方メートル発掘し、幅40センチほどの石垣の石と、石垣の周囲を埋めるこぶし大の石を複数確認した。先の石垣と平行に、南北方向に石垣が続いていると推定される。
すでに琵琶湖岸付近の湖底にも坂本城の一部とみられる石垣が確認されている。今回の石垣は湖岸から約300メートル西にあり、市によると、城の敷地の西端付近にあたると考えられるという。
滋賀県立大の中井均名誉教授(日本城郭史)は今回の発掘成果について、「今後の坂本城の復元(規模の解明)にあたっては、これらの石垣が基軸となる」などとコメントした。
市はこの付近での調査は区切りとし、石垣や外堀の遺構は保護のため埋め戻す。新たに見つかった石垣の一般公開も行わない。佐藤健司市長は5月29日の定例記者会見で「まず史跡指定を受け、活用を検討する」と述べた。
また、公益財団法人「日本城郭協会」(東京)は、坂本城遺構の保存に協力した三王不動産流通と市に、城郭文化の普及や遺構の保存などに貢献した個人や団体を顕彰する「日本城郭協会大賞」の審査員特別表彰を6月5日に、初めて行うと発表した。
同協会は「開発をしていた地元の業者が損失を被ってまで、遺跡を守ることは極めて珍しく、高く評価したい」と話している。