大津・深光寺 土台ひび割れ 改修進む
大津市千野の天台真盛宗・
で、100年余り前から伝わる鐘楼堂の土台の大規模改修が進められている。柱を支える礎石周辺のコンクリートがひび割れるなどしていた。毎年、終戦記念日には恒久平和を祈って鐘を
いてきたが、今年は見送る。寺は「平和の鐘撞きを続けるためにも改修を決断した」としている。(名和川徹)
寺の史料などによると、寺の創建年代は不明だが、かつては天台宗の寺院で、織田信長の比叡山焼き打ちで被災したとされる。最初の鐘楼堂は江戸中期の建立といい、老朽化で支柱が腐食するなどして1918年、新築された。
は太平洋戦争の金属不足で供出したが返還されず、戦後の大津市の合併事業を記念し51年、平和国家安穏などを願い新たに鋳造された。
一方、住職で市仏教会会長の前阪良憲さん(83)は、妻の三千代さん(80)の父がミャンマーで戦死したこともあり、僧侶として同国などのアジア諸国の戦跡を巡拝、慰霊法要を続けてきた。
市議会議員を務めていた1987年には、恒久平和都市宣言の決議に尽力。2013年に同寺住職に就任し、毎年8月15日には
の戦死者の追悼を合わせ、鐘楼堂で恒久平和を祈る鐘撞きを続けてきた。
鐘楼堂の4本の柱を支える礎石周辺のコンクリートのひび割れは5、6年前に判明。鐘楼堂が沈みかけている状態だった。今年1月の能登半島地震の被害状況をテレビなどで見たこともあり、前阪さんは「檀信徒も近づく鐘楼堂が、地震や台風などで崩れたら大変だ」と改修を決意した。
檀信徒に寄進の協力を呼びかけるなどし、6月から改修工事を始めた。油圧ジャッキなどを使って梵鐘を付けたままの鐘楼堂の建物を数十センチ押し上げ、土台から分離。石垣で囲われた土台内部の古い土や砕石を取り除き、礎石下にH鋼を埋め込むなどして補強している。
改修が終わるのは8月末の見通しで、終戦記念日の15日は、「平和の鐘撞き」は自坊では行わず、市仏教会会長として、市などが行う鐘撞きの式典に参加する。
福井県出身で、子どもだった戦時中は「自宅上空に飛来する米軍の戦闘機B29の爆音が恐ろしかった」という前阪さん。「世界では今も戦火が絶えない。なぜ、同じ人間同士で殺し合わなければならないのか」と憤り、「改修できた鐘楼堂で、平和を願う鐘の音をこれからも響かせたい」と話している。