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<大津園児死傷事故5年>子どもの安全 今一度

対策講じるも 風化懸念

花が手向けられた事故現場。事故後、歩道には防護柵が設置され安全対策がとられた(8日、大津市で)
花が手向けられた事故現場。事故後、歩道には防護柵が設置され安全対策がとられた(8日、大津市で)

 2019年5月、大津市内で散歩中の保育園児らが車同士の事故に巻き込まれた大津園児死傷事故は、8日で発生から5年を迎えた。事故を機に、県内では散歩コースの点検やガードレールの整備など、子どもの命を守るための対策が講じられてきた。一方、時間の経過とともに事故の風化などの問題が浮き彫りになってきている。(藤岡一樹、西村歩)

  
■散歩コース指導

 「左右を確認して気をつけて渡ってね」

 2日午前、大津市におの浜の信号機のない横断歩道で、近くの「におの浜保育園」の保育士3人が約20人の園児に声をかけた。園から約1キロ離れた公園までのいつもの散歩コースで、蛍光ベストを着用した保育士らが、横断旗で左右から来る車を止めて安全を確認すると、園児たちが次々と横断歩道を渡り始めた。

 19年の事故後、県警では希望する保育園などに対し、散歩コースの危険箇所などについての指導を実施。同園では20年に大津署から指導を受け、駐車場出入り口を
迂回うかい
するなどコースを変更し、散歩時は保育士3人以上が付いて、安全の確認を徹底している。

 保育士の一人、杉江絵里子さん(39)は、「19年の事故は衝撃的で、より危機感を持つようになった」と話し、「時間がたつにつれ風化してきたのか、横断歩道で待っていても止まってくれない車が増えた。気を引き締めて安全な散歩を続けたい」と力を込めた。

  
■ハード面整備進む

 事故を契機に、ハード面の整備も進んだ。市が管理する市道などの危険地点814か所について、約11億円をかけて防護柵の設置や歩道の幅の確保などの整備を進め、21年3月までに完了。県も県内96か所の危険地点のうち、事故現場を含め、93か所にガードレールを設置するなどの対応をしている。

 また、全国で始まった保育園周辺の道路などに注意喚起の文言を表示する「キッズゾーン」は、県内では4月1日時点で、大津市で94施設、草津市で31施設、米原市で4施設の周辺に導入されている。

 ただ、歩道の幅を広げたり、防護柵を置いたりできない生活道路など、ハード面の対策が困難な場所もあり、大津市道路・河川管理課の南康浩課長は「交通安全教育や地域との連携などソフト面との両面で対策を進めていく必要がある」と話す。

  
■啓発 減少傾向に

 対策が進む一方、事故防止に向けた活動の鈍化も浮き彫りになってきている。

 市内には保育施設は約180あり、市南部を管轄する大津署で保育園などを対象に実施した交通安全指導は、20年は30件、21年は35件、22年は23件、23年は13件と年々減少傾向にある。

 また、事故を機に大津、大津北両署が20年9月に発足した有識者会議では、大学の研究者らが事故防止に向けた意見交換や、対策の検討をしてきたが、22年の4回目を最後に開かれていない。毎年事故が発生した5月8日頃に行われていた県警による事故現場での啓発活動も今年は行われず、事故の風化が懸念される。

 九州大の志堂寺和則教授(交通心理学)は「再発防止のために事故の風化は避ける必要がある。有識者会議などの活動は継続すれば良いというわけではないが、少なくとも会議で指摘された内容を検証するなどフィードバックをし、施策に反映させることが重要だ」と話した。

     ◇

 事故現場では8日、近隣住民が手を合わせ、花を供える姿がみられた。犠牲になった園児らが通っていた保育園を運営する社会福祉法人「
檸檬れもん
会」の前田効多郎理事長は、ホームページ上で「これからも子どもたちの大切な命を守るために、この日を忘れず、安全の向上に努めてまいります」などとコメントを出した。

 
<大津園児死傷事故>
2019年5月8日午前10時15分頃、同市大萱の県道丁字路で女(57)が運転する乗用車が右折しようとして、対向車線を直進してきた軽乗用車と衝突。弾みで軽乗用車が歩道にいた散歩中の園児らの列に突っ込み、当時2歳の2人が死亡し、14人が重軽傷を負った。女は20年に自動車運転死傷行為処罰法違反などで禁錮4年6月が確定している。

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