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<夏の高校野球 全国大会>綾羽 信頼託す背番号

ベンチ入り 部員間投票で選出

選手と歓談する千代監督(左から2人目)(大津市で)
選手と歓談する千代監督(左から2人目)(大津市で)
甲子園での初戦に向け、実戦練習に励む選手たち(大津市で)
甲子園での初戦に向け、実戦練習に励む選手たち(大津市で)

 春夏通じて初の甲子園出場となる綾羽は、7日の第2試合で高知代表の高知中央と対戦する。ベンチ入りメンバーは、選手自らがふさわしいと思う「背番号」に立候補し、部員の投票によって選んだ20人だ。就任9年目の千代純平監督(36)が「(投票制は)自分を客観視し、見せ方を学べるいい機会。自分の役割を理解させることで、チーム力の向上につながる」と期待した通り、新しい歴史を刻んでみせた。(青山大起)

個人の役割 理解しプレー

 綾羽高野球部OBの千代監督は、厳しい指導の中にも時には一緒になってノックを受けるなど、選手らから「身近な存在」と慕われている。監督自身も「部員は身内や我が子のようだ」と互いに信頼が厚い。

 そんな監督が、選手らにずっと口にしてきた言葉がある。「背番号を付ける選手は、指導者や監督以上に選手からの信頼を大切にしなさい」――。だからこそ「自分が背番号を決めてしまっていいのか」と、昨秋の新チーム発足後から選手の投票によってベンチメンバーを決める方式を採った。

 選手が部員全員の前で自分にふさわしいと思う背番号に立候補し、理由を説明する。その後、用紙に自分の思う選手名と、その背番号でどんな役割を果たしてくれると考えるかを記入。甲子園出場決定後も、昨秋から数えて4度目の部員間投票が行われた。

 「高校生にとっては酷かもしれない。ある意味、監督から選ばれずに文句を言えた方が楽だとも思うが、勝負の世界の厳しさを伝えるべきだ」と千代監督は真意を語る。

 成果は昨夏と同じ顔合わせとなった滋賀学園との滋賀大会決勝でも表れた。試合前、千代監督は「米田と2人で試合を作ってくれ」と背番号1のエース藤田陸空投手(3年)を先発マウンドに送り出した。藤田投手は一回に2点を先制されながらも、試合をひっくり返した二回以降は立ち直って無失点。3番手の背番号11、米田良生有投手(2年)も八回を無失点でつないだ。

 九回一死満塁のピンチも、春の県大会ではエースナンバーを背負っていた背番号18の安井悠人投手(3年)が、内野ゴロの間の1点に抑えて優勝を決めた。「全てがこちらの想定した通りにいけた」と千代監督。登板した5投手が自分の役割を把握し、仕事を果たした結果だった。

 滋賀大会では藤田投手と同様、「背番号1」に立候補した安井投手は「悔しい気持ちがあった」としつつも、「メンバーに入ったからには、外れた3年生の分までがんばる」とすぐに切り替えた。甲子園に向けては、「先発を任されれば、試合の流れをつかむ。継投であればなんとしても無失点に抑える」と自らの役割を理解している。

 投票制になって「最初は自分がどう思われているか不安だった」と北川陽聖主将(3年)。4度の投票を経験し、「メンバー外の部員は自分たちを信頼して投票してくれている。その思いを背負ってプレーするようになった」と精神面の成長を語る。「先輩たちも経験できなかったことが今から待ち構えている。先輩の思いも背負って、楽しんで堂々とプレーしたい」と本番を心待ちにしている。

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