県警と金融機関 「窓口の声 耳傾けて」
特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺の発生が増える中、県警は最新の手口を金融機関と共有するなどして被害防止の対策を進めている。特殊詐欺の阻止率も6~7割を維持しており、県警は「警察だけでなく、金融機関と連携して食い止めている。窓口などで声かけがあった時には、耳を傾けてほしい」としている。(小手川湖子)

県内には、県警とほぼ全ての金融機関が加盟する連絡協議会がある。県警は協議会を通じて被害防止策などの情報を提供しており、その一つがヒアリングシートの配布だ。
銀行員にとって、顧客に詐欺の可能性を指摘することは勇気がいるほか、「もしも正当な振り込みだったら」とためらうこともあるという。県警は、そうした心理的ストレスを軽減するとともに、積極的に声かけをしてもらおうと、詐欺が疑われる状況を箇条書きにしたシートを作成。「県警の指導により確認しております」とも書かれており、県警が声かけにお墨付きを出すことで、窓口での水際対策を行いやすい環境づくりをしている。
大津署は7月29日、窓口で詐欺を防いだとして、滋賀銀行膳所駅前支店の井辺かおる支店長と、山崎真由子支店長代理に感謝状を贈った。
同署などによると、山崎さんは同4日、「大手証券会社に投資をするので、100万円を振り込みたい」と支店を訪れた無職女性(54)を接客。振り込みの受取人が会社名ではなく個人名義で、しかもカタカナ表記だったことから不審に思い、通報した。女性は当初、「詐欺ではないか」との指摘に耳を傾けず、井辺さんと2人で「一度警察を呼んでみて、それから考えてもいいのでは」と提案するなどして説得したという。
この事案を受けて、同支店では受取人がカタカナ表記の振り込みは、顧客とは名前の漢字も知らない関係性で詐欺の恐れがあるとして注意するように。すると、同24日にも振込先がカタカナ表記のケースがあり、被害を未然に防ぐことができたという。
県警によると、今年(6月末時点)の特殊詐欺の発生は184件。前年同期より56件増で、被害額も約6億2000万円で約1・6倍となっている。
全体のうち、65歳以上の高齢者が被害に遭ったケースは67件。4割弱と以前に比べると割合は下がっているものの、実際に犯人が自宅を訪れる手口では高齢者の被害が大半を占めているという。一方、近年は警察官をかたる手口で若い世代の被害が増えており、今年あった74件のうち55件が40歳代以下だった。手口の多様化によって、高齢者に限らず、幅広い年齢層で被害に遭っていることがうかがえる。
県警は、公式アプリ「ぽけっとポリスしが」やホームページなどで、詐欺の最新手口といった防犯情報を発信している。昨年の特殊詐欺被害者247人のうち、9割にあたる225人が自分が被害に遭うとは思わなかったと話しているといい、県警生活安全企画課は「(詐欺被害を)自分ごととして捉えることは難しい。多様な媒体を使って、様々な情報を仕入れてほしい」としている。