廃藩置県見通し / 島津家情勢
明治維新後の新政府で政権の中枢を担った西郷隆盛(1828~77年)の直筆の書簡などを紹介する企画展「幕末を生きた人々の残像」が、県立公文書館(県庁新館3階)で開かれている。9月26日まで。(角川哲朗)
県立公文書館で企画展
西郷直筆の書簡は、欧米視察中の大久保利通(1830~78年)に宛てて1872年頃に書かれたとみられ、国内情勢などを伝える内容となっている。長さ4メートルを超える巻紙状で、廃藩置県の見通しや、薩摩の旧藩主・島津家に関する情勢などが筆書きで記されており、西郷と大久保が緊密に連携していたことがうかがえる。
なかには、紀州(和歌山)出身の津田
らの金銭スキャンダルについて、「利欲ニ惑 功名水泡と相成り候義 残念之至ニ御座候」などと批判している記述もあり、政府内の不祥事も細かく報告していたことがわかる。また、大久保が西郷に送ったとみられる肖像写真に対して「醜体を極めている」とし「写真はやめた方がいい。誠に気の毒だ」などと辛口で批評している文面も確認できる。さらに末尾には、西郷の実弟・従道が「真筆に疑いない」と記した鑑定書も添えられている。
県立公文書館の担当者は「政治家・西郷の国家観がうかがえる資料であり、大久保とたもとを分かつ前の、仲の良かったふたりだからこそ言える文面もある。読んでいるといろいろと想像が膨らむので、ぜひ実物を見て感じてほしい」としている。
ほかに、1947年4月に行われた知事選で滋賀県の初代民選知事となった服部岩吉(1885~1965年)について、当選者として県公報に公示するための文案など計9点が展示されている。
開館時間は午前9時~午後5時。土日、祝日は休館。問い合わせは県立公文書館(077・528・3126)。
[紹介元] YOMIURI ONLINE 西郷の国家観 伝える書簡