米原市は11月から、高齢者が多い過疎地域に市職員がワゴン車で出向いて行政サービスを提供する「移動市役所」を始めた。県内の自治体では初めての試みで、コンビニ大手「セブン―イレブン」の移動販売車も同行し、利用者からは好評を得ている。(清家俊生)
11月13日昼過ぎ、市東部の柏原地区の施設駐車場に、市のワゴン車とセブン―イレブンの販売車が到着した。この日は、お節料理に使う新巻きザケやクリスマスケーキなどの試食もあり、地元の高齢者が次々と訪れた。
ワゴン車では、職員が住民の行政手続きに対応。乗り合いタクシーの割引パスポートの更新に来た女性(79)には書類の書き方を伝え、本庁舎の職員と車内電話で連絡を取りながら、申請の受け付けを進めた。手続きは10分ほどで終わり、女性は「わざわざ市役所に行かなくていいのは便利。ついでに試食もでき、楽しくできた」と笑顔を見せた。

ワゴン車は、改良した後部座席にパソコンやテレビ会議システム、証明書交付機器などを搭載。利用者がタッチパネルで操作すると、住民票の写しや印鑑登録証明書などの発行ができるようになっている。また、乳幼児や高齢者の紙おむつ専用の市指定ごみ袋の無料配布も行っている。テレビ会議システムでは、オンラインで本庁舎の職員が市民に書類記入のアドバイスをすることも可能だ。
市が今回、移動市役所を始めたのは、止まらない高齢化と行政サービスの集約化がある。
市では、2016年10月からコンビニ店で各種証明書を発行するサービスを始めたものの、山間部では身近にコンビニ店がない地域も多い。また、柏原、吉槻、醒井、息郷の4か所で「行政サービスセンター」を運営しているが、証明書の発行件数や申請者数は、ここ5年でいずれも大きく減少している。
また、65歳以上の高齢化率は31・1%(10月現在)で、5年前から2ポイント以上近く増えており、今後も高齢化が進むことが想定されている。
このため、市は行政サービスの効率化を図ろうと、同センターの開庁日を週2日に減らす一方で、移動市役所で同センターがある4か所の地域を週2回巡回することにした。
市地域振興課の担当者は「コンビニ店だけでなく、銀行などの民間企業にも協力を依頼し、利便性も高めていきたい」としている。市は今年度の利用者数などを分析し、来年度から同センターを廃止して移動市役所に一本化する方針だ。

