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秘仏 室町期の「円派」作 <東近江・善勝寺>

像内墨書に名や花押

円派の仏師による制作と判明した木造十一面観音立像=東近江市提供
円派の仏師による制作と判明した木造十一面観音立像=東近江市提供
円派の仏師名や制作年代などが記された墨書銘文=東近江市提供
円派の仏師名や制作年代などが記された墨書銘文=東近江市提供

 東近江市佐野町の善勝寺に秘仏として伝わる木造十一面観音立像が、室町時代に京都を中心に活躍した「円派」の仏師によって造られたことが像内に記された墨書銘文からわかった。同市が発表した。制作年代や作者が特定できる仏像は珍しいという。(中村総一郎)

 市によると、一木割り

ぎ造で、頭の上に小さな仏頭が複数載った像高138・2センチ。ビャクダンの代用の檀材としてヒノキを使い、彩色を施さない素地仕上げが特徴だ。大きな頬と面長の顔立ちや、身に着けた衣を分厚く立体的に表現している点が、室町時代の仏像によく見られる様式と一致している。

 2019年8月~21年2月に仏像を解体修理した際、像内から和紙に包まれた遺骨や焼損した仏像の木片、固形の墨とともに、仏像の背部分の内側に墨書銘文が記されているのがみつかった。

 銘文には「作者三条大佛處流民部卿法眼光圓、同弟子備後祐円」と円派の仏師とみられる「光圓」「祐円」の名や花押のほか、制作年代と依頼主の名の「文明九年(1477年)九月七日壽山大姉敬白」や、「祥仙居士」の「第三廻追膳也」(三回忌の供養)とする制作目的が記されていた。銘文にある祥仙居士と壽山大姉は地域の有力者夫婦とみられ、わずか15日ほどで仏像を完成させたことも書かれていた。

 仏像を調査した東近江市文化財保護審議会委員の土井通弘・就実大名誉教授(日本美術史)によると、仏師は円派のほか、院派、慶派の3派に分かれていたが、円派は鎌倉時代以降、慶派の台頭などで主流から離れたため、室町時代の作例は少ないという。

 仏像は4月26日に市文化財(美術工芸品)に指定。土井名誉教授は「仏像の制作年、仏師、願主、供養者、造立の目的がそろい、仏像の由来が明確に分かる貴重な発見。室町時代の円派仏師の流れを知る確実な資料であるだけでなく、その時代の仏像の代表的な作風を示す基準作になる」と評価している。

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