余呉湖(長浜市)のほとりに和風オーベルジュ「
」を構える徳山浩明さん(65)が、食文化の発展に貢献した料理人に贈られる農林水産省の「料理マスターズ」ゴールド賞を県内で初めて受賞した。滋賀の郷土料理「ふなずし」と本格的に向き合って約30年。「先人から教わった伝統を次の世代に伝承し、滋賀の人が誇りに思えるものにできれば」と語る。(青山大起)

料理マスターズは、2010年度に始まり、生産者と連携して地産地消や食文化の普及に尽力した料理人を顕彰する制度。顕著な功績を上げ、5年以上取り組むごとにブロンズ、シルバーと賞が贈られる。ゴールド賞の受賞には最短でも15年かかり、徳山さんで12人目。農水省の担当者は「地元の発酵文化を新たな食文化として進化させ、海外にも『HAKKO』文化を積極的に発信してきた」と評価する。
徳山さんは旧余呉町出身。高校卒業後、料理の専門学校に通いながら京都で和食の修業に励んだ。「地元で料理人が必要」と父親に言われて郷里に戻り、
を積んだ。
発酵の世界に足を踏み入れたのは、1994年に余呉湖畔に「日本発酵機構余呉研究所」が設立され、所長で発酵学者の小泉武夫さんと出会ったことがきっかけ。小泉さんから「微生物が人類を救う」と発酵の魅力を教わり、当たり前のように使っていたみそやしょうゆが発酵によってできていることを再認識。「和食は発酵なくして成り立たない」と、発酵料理を突き詰めていくようになった。
2004年に徳山鮓を創業。小泉さんが命名した。「滋賀の食文化であるふなずしを世に認めてもらいなさい」という言葉を受け、県内のふなずしを食べ歩いた。全国各地で開かれた小泉さんの講演会にも出向き、発酵の研究と魅力発信に努めてきた。
「どこに味のヒントが隠れているか分からない。海外を含め色々な人から意見を聞き、より良い料理にする方法を毎日考えている」と、今も研究を続ける。現在提供している「
」は、初めてふなずしを食べる人にも食べやすいよう、包丁の入れ方や口に含む量にまでこだわるなど、改良を積み重ねている。

発酵のほかにも、地元の野菜や湖魚、クマやイノシシといったジビエにも挑戦。徳山さんは子ども3人全員を説得して地元で料理や接客の専門性を磨いてもらっており、食文化の発展に向け、後継者として期待を寄せる。

「発酵は、まだまだ頂点が見えない。微生物の動きは私たちには読めず、手ごわい相手」と徳山さん。「どれだけ感動を与えられるか、記憶に残る料理を作れるか。子どもたちが自信を持ってふなずしをお土産に持って行くような時代になれば」とさらなる飛躍を心に期している。
