大津市、来年度 保育士 他園に振り分け
4月の待機児童数が全国最多だった大津市は、要因となっている保育士不足の解消に向け、定員割れしているJR大津駅近くの市立逢坂保育園(音羽台)を来年度休園し、保育士8人を他園に振り分け、市全体の受け入れ園児数を増やすことを決めた。このため園児7人が転園を強いられることになり、保護者からは「急で一方的な決定に納得できない。結局は子どもが犠牲になる」と不満の声も上がる。(林華代)
7人要転園「急で一方的」
大津市では宅地造成やマンション開発が進んで子育て世帯の流入があり、4月の待機児童数は前年の6人から178人急増、全国最多の184人となった。
市によると、保育施設は市内に市立14園、民間113施設あり、保育施設の定員には約520人(4月1日現在)空きはあるが、保育士が足りない。市は、保育士1人が担当する1~2歳児の人数を5人と定めており、184人を受け入れるには保育士約40人が必要という。
市は今年度、保育士確保のため、新たに市内で就労し、奨学金の返済を続けている保育士に年間最大24万円を最長6年補助する制度や、ブランクのある潜在保育士に年間最大12万円を給付する制度を始めた。また来年度採用の保育士枠を前年度の約2倍の29人程度に拡大し、既に補欠も含め37人に合格を出した。
だが合格者全員を採用できるとは限らず、来年も待機児童を解消できるかは不透明だ。対策の一つとして定員割れしている逢坂保育園に着目。同園には0~2歳児17人が通い、園長を含めフルタイムの保育士が8人いる。市は園を休園し、8人を他園に振り分けることで、約20~40人の待機児童を新たに受け入れることができると試算した。
園児17人のうち2歳児10人は今年度卒園するが、0~1歳児の7人は転園を余儀なくされる。市は転園先として、約500メートル先の市立朝日が丘保育園(朝日が丘)を確約し、民間保育園を希望する場合は、入所の選考基準となる点数を特別に加算して対応する。
市は7月下旬に保護者へ文書で通知し、8月に説明会を開いた。転園を迫られた園児の中には難病を患い、4月に入園したばかりの園児もいる。30歳代の母親は「感染症による重症化のリスクを考え、少人数の保育園を選び、園の看護師さんに慣れたばかりなのに。仕事しながら保育園を探すのは大変。せめて1年休園を待ってほしい」と訴える。
保護者会長の女性(32)も「保護者の意見も聞かず、市が一方的に決めるのはおかしい」と憤る。
市子ども未来局の東弘典局長は「保護者の皆様にご迷惑をおかけして、大変申し訳ない。保育ニーズの高まりに保育士確保が追いついていない」と釈明する。
待機児童問題に詳しい大阪教育大の小崎恭弘教授は「児童福祉法は『子どもの最善の利益』を定めている。意思表明できない子どもの代わりに保護者の声を事前に聞くべきで、市の決定は性急だ。人口政策は自治体の基本で、しわ寄せが子どもに及ぶのはおかしい」と話す。