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大津・園児死傷6年 事故知って 意識変えて

「誰もが加害者 なり得る」

 大津市の県道で散歩中の保育園児らが車同士の事故に巻き込まれた大津園児死傷事故は、8日で発生から6年が経過した。事故で重傷を負った女児(9)の父親(37)は「時間の経過とともに、風化していくかもしれない」としながらも、「自分の運転技術を過信せず、誰もが加害者になり得るという意識を持ってほしい」と訴えている。(青山大起)

花や菓子が供えられた事故現場
花や菓子が供えられた事故現場

 事故は2019年5月8日午前10時15分頃、同市大萱の県道丁字路で、乗用車が右折時に対向車線を直進してきた軽乗用車と衝突。弾みで軽乗用車が歩道にいた散歩中の園児らの列に突っ込み、当時2歳の2人が死亡し、園児や保育士ら14人が重軽傷を負った。

 女児の父親は4月29日に取材に応じ、「被害者家族や遺族が受けた傷が癒えることはない。事故の悲惨さを多くの人に知ってもらいたい」と語った。当時3歳だった女児は左脚や骨盤などを骨折し、約2か月半入院。事故当日、保育士から涙ぐんだ声で「娘さんが事故に巻き込まれた」と電話を受け、病院で女児の状況を知った時、心の底からこみ上げた震えは今でも忘れられないという。

 現在、女児は小学3年生。心配された後遺症はなかったが、学校で交通マナーを学ぶ授業があった際、「しんどい。怖い」と突然泣き出して先生に訴えたことがあった。父親は「トラウマが残っているのかもしれない」と不安を口にする。

 信号のない交差点で、一時停止をしない車をよく見かけるという。「結局はドライバー一人一人の意識が大切。事故が起こってからでは遅い。特に小さい子どもは危険予知能力が低いので、余裕のある運転を心がけてほしい」と強調した。

 事故現場では8日午前、花や菓子が供えられ、近隣住民らが手を合わせる姿がみられた。献花に訪れた現場近くで働く男性(56)は「このような事故を風化させてはいけない。『二度と事故が起きないように』と花を手向けた」と話した。

 大津署は8日朝、市内の小学校の通学路に立って見守り活動を実施。市立平野小の近くでは、署員ら約10人が「子どもたちを交通事故から守ろう」と書かれた旗を掲げ、交差点を通る車に一時停止を呼びかけたほか、速度違反の取り締まりを行った。

 また、同署は13日に月の輪自動車教習所(大津市月輪)で、市内57の保育園、幼稚園の職員や園児計約100人が参加する交通安全教室を実施する。交差点を渡る時の注意点など、教習所のコースを活用した実践的な指導を行うことにしている。

 県警交通企画課によると、今年に入って県内での交通事故による死者は、7日現在で16人。中学生以下の子どもはいないが、昨年同期比で8人増となっている。

 同署の亀田貴・交通1課長は「ドライバーだけでなく小さい子どもにも交通ルールを知ってもらい、1件でも多く悲惨な事故を防ぐため、引き続き交通指導を徹底していく」と話している。

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