甲賀市 県内初の研修開催へ
情報弱者とならない環境に
災害時に外国人居住者らが情報弱者とならないよう、甲賀市は「外国人防災リーダー育成研修」を県内で初めて開催する。誰一人取り残されない環境作りを目指すもので、市多文化共生推進室は「支援される側から支援する側となる人材を発掘、育成して外国人居住者の生活がスムーズになるようにしたい」としている。(河村真司)
市内の外国人住民は4741人で、人口比率が県内で3番目に高い(昨年12月末現在)。約36%を占めるブラジルを筆頭に、ベトナム、フィリピンなど47か国・地域に及んでおり、言語も29と多様化している。
日本語の理解に困る例が多く、特に漢字が読めずに情報を得ることが難しいという。これまで、市国際交流協会の外国人ボランティアらにSNSで各言語での情報発信を依頼していた。正確な情報を迅速に届ける人材の育成は急務で、外国語を話せる防災リーダー育成に取り組むことになった。
1回目の研修は10月26日に開き▽市の防災対策▽外国人防災リーダーに求められる役割――などを受講。11月8日の2回目は▽通訳、翻訳技術▽非常用トイレの作成――などを学び、12月に人と防災未来センター(神戸市)を訪れる予定となっている。受講者の国籍は問わず、定員10人で現在、ブラジル、ベトナム、ペルー、中国、インドネシアの5か国9人がすでに申し込んでいる。
同協会でボランティアとして活動している山本ペドロ明さん(65)は、ブラジル・サンパウロ州出身。約35年前から市内で暮らしており「言葉が一番困った。外国人には情報はなかなか入らない」と自らの経験を振り返る。同協会の鮫島裕子さん(38)は「新型コロナ禍の時は、日本語のホームページだけでは給付金やワクチンに関する情報が伝わらなかった。彼らがつながっている媒体で送ることが大事」と多言語でのSNS発信の必要性を訴える。
2023年8月に台風7号が激しい風雨をもたらした際には、市内に「避難指示」が出され、避難所も設けられた。18年の西日本豪雨や、24年の能登半島地震など自然災害発生のニュースが多い日本に住む外国人にとって、情報収集手段への関心は大きい。市の担当者は「リーダーに災害について知ってもらい、まず情報発信できるようにしたい。そして避難所で活動できる人材になってもらえれば」と話し、3年間で30人の防災リーダー育成を目標に掲げる。
11月16日の市防災訓練では、研修受講者が「多文化防災ブース」で啓発を行う予定で、防災リーダーとしての任命式も行われる。山本さんも研修への申し込みを済ませており、「何ができるかわからないが、頑張りたい」と支援の現場での重責を背負う覚悟だ。