殺処分ゼロへ 官民連携強化
猫の殺処分を減らそうと、大津市のボランティアグループ「真野北アニマルレスキュー」が市内でほぼ毎月、保護猫の譲渡会を開催している。県も今年度から「殺処分ゼロ」を目標とする計画を掲げるが、今なお多くの命が失われており、同グループ代表の山内勝彦さん(62)は「多くの人に動物の命の大切さに気づいてもらえるよう、活動を続けていきたい」と話している。(角川哲朗)
大津の団体 月1回譲渡会
昨年12月22日、大津市中央の「まちづくり大津百町館」で開かれた保護猫の譲渡会。会場にはずらりとケージが並び、多くの家族連れらが訪れていた。ケージには毛布にくるまって寝ている猫や仲良くじゃれ合う猫などがおり、来場者は性格を聞いたり、抱っこしたりして「意中の子」を検討していた。
譲渡会は山内さんらが中心となり2021年から月1回のペースで開催している。各地のボランティアが保護した猫が毎回40~50匹紹介され、多い時で7割程度の猫が新たな飼い主に引き取られるという。
山内さんが保護猫の活動を始めたのは約20年前。自宅のある大津市北部のニュータウンには当時多くの野良猫がおり、毎年のように子猫が生まれるが、そのほとんどが育たずに死んでしまうことに心を痛めていた。
山内さんが調査すると、地区内の野良猫は約270匹。それぞれよく出没する場所を特定し写真を撮るなどしてリスト化し、およそ3年かけてほぼ全ての猫を把握した。その後、一匹ずつ捕まえてワクチンを打ったり、避妊手術を行ったりしたという。
21年9月、市動物愛護センターなどから依頼を受け、譲渡会をスタート。県内や京都、大阪などの保護猫ボランティアに声をかけ、多くの猫を一堂に集める。希望者は飼育環境を整え、2週間のトライアルをした上で飼えると判断されて、譲渡成立となる。譲渡費はワクチン接種代や避妊手術代などの実費のみで計1万~2万円程度という。
動物の殺処分を巡っては、県も対策に本腰を入れている。今年度から始まった「第3次県動物愛護管理推進計画」では10年かけて「犬猫の実質的な致死処分ゼロ」を目指すとしており、「終生飼養・適正飼養の推進」や「連携強化による譲渡推進」といった重点施策が定められた。
県によると、22年度に県が保護した犬265匹、猫356匹のうち殺処分となったのは高齢犬5匹と子犬19匹、生後間もない子猫113匹だった。生まれたばかりの子猫はミルクを自力で飲むことができず、24時間態勢で世話が必要となり、やむなく殺処分されるという。県は目標達成には、子猫の世話をする仕組みづくりもカギになるとしている。
猫の殺処分数は1989年度の約4900匹をピークに減少傾向にあるが、新たな課題も浮かぶ。山内さんによると、お年寄りが施設に入居したり、亡くなったりして、飼えなくなった猫の引き取りを求める相談が増えているという。山内さんは「ボランティアだけでは限界もあり、行政とも積極的に連携していきたいが、県内では官民連携がまだまだ足りていないと感じる」と打ち明ける。
次の譲渡会は今月26日に「まちづくり大津百町館」で行われる予定。山内さんは「ただ譲ればいいというのではなく、きちんと猫が飼育される環境を整え、動物も人も幸せになる社会実現への一助になれば」と話している。問い合わせは山内さん(080・6166・1315)。