追加料金なしで読売新聞オンラインのすべての記事が読めます!

交通空白解消 負担重く 

未踏の県政へ㊤

交通空白解消 負担重く 
日野町の公共ライドシェアの車両。住民の足の確保は喫緊の課題だが、市町の負担は軽くない(日野町で)

 日野町郊外の田園地帯にある近江鉄道朝日野駅。1日夕方、町外で仕事を終え、電車から降りた女性(76)を「公共ライドシェア」の車両が待っていた。公共交通機関の利用が難しい「交通空白」の解消を目指し、町がこの日始めた今年度の試みで、午後5~7時に運行する。

 女性の夫は自宅で転倒して骨折し、車での送迎ができない。町の乗り合いタクシー「チョイソコひの」は午後5時までで逃すと交通手段はない。町民は400円で乗れ、女性は「別の駅からタクシーで帰ると3000円はかかる。本当にありがたい」と語る。

 日野町では民間のタクシーや町営バスが土日は運行しないなどで利便性が低い。町はバスを3路線減らし、チョイソコひのを拡大。空白の時間を補おうと2024年度からライドシェアも段階的に試行する。

 堀江和博町長は「地域の営みが失われてはならない。生活し続けてもらうには今の枠組みが欠かせない」と強調するが、バスと乗り合いタクシー、ライドシェアに加え、上下分離(公有民営)となった近江鉄道の維持管理の負担金も合わせて昨年度の費用は約1億7000万円に上り、負担は重い。

 人口減や高齢化などを背景に、県内では日野町の交通空白のような公共交通の課題が生じている。誰もがアクセスできる移動の足がないか、あっても頻度が少なく利用しづらい地域を、国は「交通空白」地区と位置づけ、自治体に解消を促す。国土交通省のまとめでは、5月時点で全国に2740か所あり、県内には甲賀、草津、守山、米原市と日野、竜王町の計6市町に交通空白がある。

 こうした地域を念頭に、公共交通の維持・充実に向けた安定的な財源を得るため、三日月知事が提唱するのが交通税だ。知事は県税制審議会に「地域公共交通を支えるための税制」の導入可能性を諮問。22年4月に「具体的に挑戦すべき」との答申を受けて、同年の知事選で交通税の検討推進を掲げて3選した。

 3期目では、県の「滋賀地域交通計画」に交通税を盛り込む方向で、具体像を議論。ただ、計画の素案には県民から反対や慎重な意見が相次ぎ、県議会も「導入に固執せず」と求める決議を可決した。

 知事は今回の選挙公約では交通税の言葉は使わず「新たな税」とトーンダウン。一方、街頭演説では「交通税があればどういう社会になるか、今のうちから考えたい」とし、導入に強い意欲をにじませる場面もあった。

 交通税について、県税制審は県税に上乗せする課税を基本とし、個人・法人両方への課税が適当としている。県は、県民が均等に負担する場合は1人あたり年400~2700円との「機械的試算」を公表した。知事は3期目に交通税の「絵姿(中身)を示す」と繰り返したが、具体的には何も決まっておらず、県民の理解が深まっているとも言えない。4期目に全19市町でタウンミーティングを行うなど、交通税への理解を得たい考えだ。

 課題は県議会への対応だ。導入には県議会で条例案が可決される必要があるが、最大会派・自民党は現時点で反対している。県議団幹部は「今の計画のまま交通税を取るのは無理がある」とし、来年の県議選で自民が単独過半数を得れば、否決も可能になり、議論の行方は大きく左右される。

 物価高騰が続く中、新しい税負担への抵抗感を拭い去るのは容易ではない。知事には県民や県議会と、今まで以上に丁寧な議論を重ね、合意形成を図る姿勢が求められる。

 4人が争った知事選は、現職の三日月大造氏が、県政史上初となる4選を果たした。県政の課題について、三日月氏が掲げた公約や選挙戦での訴えも踏まえて考える。

滋賀の最新ニュースと話題

[紹介元] YOMIURI ONLINE 交通空白解消 負担重く