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亡き夫のエッセー 本に

県高野連元会長・溪さん遺稿編集

逸哉さんの遺稿をまとめた本を手にする久さん(大津市で)
逸哉さんの遺稿をまとめた本を手にする久さん(大津市で)
出版された本
出版された本

 1989~93年に県高野連会長を務め、2019年に84歳で亡くなった
たに
逸哉さんが、生前に書きためた紀行エッセー「地球一周してみたら」(税込み1320円、四六判132ページ、サンライズ出版)が今年3月出版された。妻の
ひさ
さん(88)(大津市)が逸哉さんの死後、遺稿を見つけてまとめた。久さんは「教育者としての思いが詰まった本で、多くの人に読んでもらいたい」と話している。(角川哲朗)

世界一周記録など3冊

 逸哉さんは1934年、信楽町(現甲賀市)生まれ。滋賀大を卒業後、英語教諭として大津市内の中学校で教べんをとり、県立高校の教諭・校長などを歴任。県高野連会長もつとめた。定年後は滋賀大教育学部の講師として教壇に立ち、終生、教育に携わった。

 紀行エッセーは、2015年4月から105日間かけて夫婦で巡った世界一周の船旅の記録で、旅行後、逸哉さんが書き残していた原稿を久さんがまとめた。逸哉さんは13年に胃がんで胃を全摘出し、背骨の中にある後縦
靱帯じんたい
が骨のように硬くなり神経などを圧迫する国指定の難病「後縦靱帯骨化症」による
頸椎けいつい
の手術も受けた。世界一周旅行はリハビリを兼ねて久さんが提案したという。

 逸哉さんは出発前から訪問地の国の歴史や文化を熱心に調べ、旅ではインドやトルコ、ヨーロッパなど24の寄港地を訪問。立ち寄った国や地域では、観光地だけでなく、現地の学校などに積極的に足を運んだ。中でもデンマークの全寮制学校で見学した試験や成績のない北欧独自の教育文化「フォルケホイスコーレ」に感銘を受けていた様子だったという。

 本では、現地の歴史や文化を軽快な筆遣いで紹介。ベルギーで散策中に行き先をあれもこれもと思っていると時間が足りなくなった体験から、「修学旅行前に生徒たちに注意していたことを、改めて思い出していた」といった元教師らしい一文も記されている。

 久さんによると、生前、逸哉さんが自宅で原稿を書いている姿はほとんど見たことはなかったという。遺品整理のため部屋に入ると、机の下に置かれていた段ボールの中から大量の原稿を発見。手にとって読み進めるうちに、言葉からあふれる他者に対する温かい思いが伝わり、「夫の言葉を広く世間に知ってもらいたい」と3冊の本にまとめた。

 出版したのは「地球――」のほか、教師時代に学校新聞用に執筆した原稿などをまとめた「ある教師の提言」(牧歌舎)、写真エッセー集「信楽・安土城・幻住庵」(サンライズ出版)。久さんは「出版して自分の思いを世の中に伝えてくれと託された思いがしていた。それがかなってほっとしました」と笑顔を見せた。

 問い合わせは、各出版社へ。

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[紹介元] YOMIURI ONLINE 亡き夫のエッセー 本に

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