世界かんがい施設遺産
国内審査通過 登録されれば県内初
大正時代に整備された豊郷町石畑のかんがい施設「
」が、「国際かんがい排水委員会」(ICID、本部ニューデリー)が認定する今年の世界かんがい施設遺産の国内候補に選ばれた。同遺産の登録は2023年11月現在、世界19か国161施設、うち国内では51施設あり、今回登録されれば県内初となる。(立花宏司)
龍ケ池揚水機場のある地域は、干ばつが絶えなかった犬上川の扇状地で、1909年(明治42年)の大干ばつを機に新たな水源を確保するため、延べ約1000人による大規模な掘削工事が行われた。翌年に豊富な地下水が確認され、13年(大正2年)に地下水をくみ上げるイギリス製の「コンケロル式離心動ポンプ(蒸気ポンプ)」を備えた同揚水機場が完成した。
現在もほぼ建設当時の姿をとどめ、動力を蒸気から電気に切り替えるなどして使われてきた。初代のポンプや施設の図面、写真なども数多く残されている。
町は今年2月、ICID日本国内委員会(事務局・農林水産省)に、世界かんがい施設遺産の登録を申請。構想や設計、規模など、当時としては先進的で、卓越した技術が使われていたことなどが評価され、先月、同委員会の審査を通過した。
同委員会が5月中に本部に申請し、審査を経て、認定されれば今年9月にオーストラリアで開催される理事会で発表される予定だ。国内からは、龍ケ池揚水機場のほか、
(宮城県)と
(兵庫県)が国内審査を通過している。
同町の伊藤定勉町長は「町の農業振興の歴史と先人の功績を世界に広める機会ができ、光栄。登録されることを祈っている」とコメントした。
<世界かんがい施設遺産>
かんがいの歴史、発展を明らかにして理解を促し、関連施設の適切な保存を助けるため、82か国・地域が加盟する「国際かんがい排水委員会」が、建設から100年以上経過しているかんがいが主目的のダムやため池などを認定・登録する制度。