追加料金なしで読売新聞オンラインのすべての記事が読めます!

「違法取り調べ 苦しみ知って」

元看護助手国賠訴訟 初の本人尋問

記者会見で裁判を振り返る弁護士ら(大津市で)
記者会見で裁判を振り返る弁護士ら(大津市で)

 東近江市の湖東記念病院で死亡した男性患者に対する殺人罪で服役後、再審無罪が確定した元看護助手・西山美香さん(44)が、国と県に計約4300万円の国家賠償を求めた訴訟で初めての本人尋問が27日、地裁(池田聡介裁判長)で行われた。西山さんは「違法な取り調べで苦しんでいる人がいることを知ってほしい」と訴えた。(青山大起)

地裁 西山さんが訴え

 西山さんは2003年に死亡した入院患者について、「人工呼吸器を外した」と自白し、04年に逮捕・起訴された。公判で否認したが、07年に懲役12年の有罪が確定。17年8月まで服役した。同年、大阪高裁が再審開始を決定し、大津地裁が20年3月に再審無罪を言い渡し、確定。同年12月、違法捜査で精神的苦痛を受けたとして国賠訴訟を提訴した。

 訴状によると、県警は軽度の知的障害がある西山さんの迎合しやすい性格や、当時取り調べを担当していた男性警察官に好意を抱いていたことを利用して誘導し、虚偽の自白調書を作成。自白後に供述を撤回したり、殺害の事実を否定したりした内容の調書を作成せず、解剖医が男性の自然死の可能性に触れた捜査報告書など西山さんに有利な証拠を検察に送らなかったなどとしている。

 これまでの公判で、当時、取り調べを担当した男性警察官と、その上司で捜査を指揮した元警察官の男性らが証人として出廷。警察官は自白の誘導について問われると「一切ない」と否定し、西山さんからの好意も「意識していない」と述べていた。また、上司だった男性は証拠を検察へ送らなかった理由について、「一切を送らなければならないという理解はなかった」とし、捜査への影響に関して「警察が不利になるという認識はない」と主張していた。

 この日の尋問で、西山さんは当時の取り調べの様子を説明。「警察官が机をたたいたり、亡くなった患者の写真を見せたりした」と話し、「『責任を感じないのか』とこわい取り調べを受けた」と語った。

 また、自白を誘導され、逮捕されたときの心情について、「私が罪をかぶれば、また(警察官と)2人で会えるといううれしさがあった」と取り調べをした警察官に恋愛感情を抱いていたとし、「弁護士よりも信用していた」と話した。警察官の証言について、「うそばっかりついていてひどい」と述べ、「恋愛、結婚、出産など女性として大事な時期を奪われた」と、無実の罪で服役した苦悩を語った。

 裁判後、西山さんの弁護団は大津市内で記者会見し、井戸謙一弁護団長は「県から有効な反対尋問はなされなかった。捜査には問題がないと言い続けて反省がなかった」と指摘。「裁判所の判断をもって県警に反省を迫りたい」と話した。

滋賀の最新ニュースと話題

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です