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「武運長久」絵馬に込め

豊国神社から3500枚 日中戦争以降に奉納

絵馬には「武運長久」などと書かれている(彦根市で)
絵馬には「武運長久」などと書かれている(彦根市で)
県護国神社に戦時絵馬を奉納する湯本宮司(右、彦根市で)
県護国神社に戦時絵馬を奉納する湯本宮司(右、彦根市で)

 日中戦争や太平洋戦争に出征した兵士や家族らが戦地での武運を祈って奉納した「戦時絵馬」約3500枚が、長浜市南呉服町の豊国神社で見つかった。戦後80年を前に戦没者の
冥福めいふく
などを祈るため、神社は大半の絵馬を

き上げ神事で供養し、20枚を県護国神社(彦根市尾末町)に奉納した。関係者は、戦時を伝える史料として一般公開を計画している。(林華代)

 豊国神社は長浜城を築城し、街を発展させた豊臣秀吉をまつる。その秀吉の武運にあやかろうと、1937年の日中戦争から45年の太平洋戦争にかけて、出征兵や家族、親族らが絵馬を奉納。絵馬には「奉祈願 皇軍戦勝 武運長久」と書かれ、日付と出征兵の名前が添えられていた。

 約2年前、社殿天井の雨漏りがひどくなり、業者が屋根裏を調べたところ、約3500枚の絵馬が隠されるように置かれていたという。湯本崇彦宮司は、市遺族会、県出身の戦没者をまつる県護国神社などと扱いを相談。「丁寧な祭事で絵馬の願をほどいて供養をすることこそが、戦争の終わりにつながる」などとして、昨年12月29日に思い入れのあるものを焼いて供養する焚き上げ神事を行い、一部は県護国神社に納めることにした。

 県護国神社では1月31日、湯本宮司が37年と45年の絵馬を10枚ずつ持参し、奉納奉告祭が営まれた。湯本宮司は「師走に懇ろにご供養させていただいた。一部残して戦争の記録として皆さんに見ていただければ」と話し、受け取った山本大司
禰宜ねぎ
は「ご英霊が戦後80年なので、私たちのことを忘れないでという思いでおられたのでは。展示方法を検討していきたい」と応じた。

 一方、絵馬をお焚き上げするのではなく、「貴重な地域の歴史遺産として残してほしかった」とする声も。ほとんどが供養されたのを受け、長浜市のフリージャーナリスト出雲一郎さん(69)らが1月に県庁で記者会見し、「宗教上のこともあるが、悲惨な歴史を知る重要史料が失われたことは残念だ」と述べた。今後も寺社で同様の絵馬などが見つかるかもしれないとして、出雲さんは「戦後80年を機に地域の歴史遺産を守るようにしてほしい」と問題提起している。

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[紹介元] YOMIURI ONLINE 「武運長久」絵馬に込め

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