少女の作文 冊子に
性暴力被害予防へ活用
「『たすけて』はまほうのことばです」――。性犯罪被害に遭った県内の少女が、周囲に助けを求めることの大切さを作文で訴え、その内容に目を留めた公益社団法人「おうみ犯罪被害者支援センター」が3月、冊子にまとめた。冊子はセンターが学校で開く性暴力被害予防の出前授業などで配布し、活用するという。(藤岡一樹)
2021年秋頃、県内の小学4年生の少女(当時)が性被害を受けた。母親が被害に気づき、県と県警、同センター、医療機関の4者で性被害者を支える仕組み「性暴力被害者総合ケアワンストップびわ湖(SATOCO)」に連絡。事件の発覚を受け、加害者の男は逮捕され、その後実刑判決を受けた。
少女は翌年、学校で書いた作文で、当時の体験を告白した。
「私は、一度犯罪ひがいにあったことがあります。そのとき、家族や友だち、先生、だれにも言えなかったんです。犯罪が発覚していなければ、ずっとなやんだりつらかったりしていたでしょう」
少女は事件後、ショックで立ちなおれないと感じたこともあったが、家族やカウンセラーに支えられた。
作文では、母親から「なにかあったら『たすけて』と言って、お母さんに、SOSサインをだしておしえて、助けてあげるからね」と言葉をかけられ、「『たすけて』はまほうの言葉なんだと思いました」と感じたことなどを明かしている。
そして同様の被害にあった人らへ向けてのメッセージも記していた。
「『たすけて』はよわい言葉でも、あきらめる言葉じゃありません。人をすくう言葉です。『たすけて』は、この作文を読んだ人を、きっと“たすけて”くれると思います」
作文を見た母親は少女が自らの意思で事件のことを書いたことに驚き、作文をセンターに送った。センターでは、少女の訴えを同世代に知ってもらうことで被害防止につなげようと冊子にまとめることを決め、約5000部を作成。6月から出前授業などで活用するという。センター担当者は「同世代の体験はより強く響くと思う。つらい思いをしたときはすぐにSOSを出して」と話している。
おうみ犯罪被害者支援センターの相談電話は077・525・8103(月~金、午前10時~午後4時)。SATOCOの24時間ホットラインは、090・2599・3105。